既成概念というワクを嫌う深町純氏は、卒業2週間前にして東京芸大作曲科を飛び出してポピュラー音楽の世界に飛び込んだ、ある意味で“パイオニア”である。 井上陽水・杉田二郎・アリス等J-POPのレコーディングに関わり歌モノのアルバム2枚を発表ののち'70年代中期にNYへ渡り、当時まだ無名だったブレッカー・ブラザースやスタッフのメンバーと交友を持ち、『The Sea of Dirac』『スパイラル・ステップス』を発表した(2009年現在では『ゴールデン・ベスト』でその一端を聴ける)。 火花の散るような緊張感ある貴重な演奏だが、当時の録音機材やマスターテープ故か音質には問題が多く、また実験色強いもの故に聞き手を選ぶ一面があったのも否めないだろう。
今回の復刻を機会に深町氏がライナーを書いたとおりこのアルバムはボーカルも入れておりポップさが優先されて、彼のキャリアでも最も聞きやすい作品となっている。折込の写真からも非常にいい雰囲気で録音されていたことが窺える。
キータッチのシャープな“スタッフ”のリチャード・ティーを迎えたファンキーな「On The Move」「Letter to NY」、マイク・マイニエリのヴィブラフォンがいい味出してる「You're Sorry」「When I Got Your Wave“PATHETIQUE”(原曲はベートーベンの悲愴)」、テンション高い変拍子の「Dance of Paranoia Op.2」、時代劇用に書き下ろされたサスペンス風の「Departure in the Dark」と「同-Again」(スティーブ・ガッドのドラムがスゴイ!)などの収録曲は、コンピュータに勝る人間の知恵とテクニックの結晶として末永く残してゆくべきだと思う。