本書は、1920年代のアメリカ社会史の傑作である。原著は、1931年に出版された。「ほんの昨日のことのようによく覚えている事件や状況」を書き記したものである。
同じ著者による『シンス・イエスタデイ 1930年代・アメリカ』という余り知られていない続編もある。こちらも面白いのだが、1冊だけというならば『オンリー・イエスタデイ』ということになろうか。
1920年代のアメリカは、共産主義とK・K・K団の脅威とその退潮、生活とモラルの革命、誇大宣伝、禁酒法とカポネ、不動産ブーム、株価の高騰と崩壊…といった時代であった。
禁酒法(1920年実施、33年廃止)は、映画などで多少のことは知っていたが、信じがたい。それは、「動機が高潔で目的は高遠」であった。しかし、結果に対する想像力が欠如していた。緊密な組織を持った禁酒勢力は、組織を持たない禁酒法反対勢力より強力であった。
また、法案が議会に提出された1917年は、戦争(第1次世界大戦)に関心が奪われ、国民は「ほとんどうわの空だった」という。
1920年には婦人参政権が実現した。女性の断髪、口紅、喫煙、短いスカート。缶詰、デリカテッセン、クリーニング店利用率の急増。電気洗濯機、掃除機の普及。そして、就業。女性は「自分自身のために生きる」ようになった。
ラジオ、自動車、ゴルフも普及した。アメリカは繁栄し、実業が尊敬された。また、新聞は種類が減って、発行部数が増え「ニュースや考え方も大量生産」された。脅迫的な広告で歯磨や口臭防止剤が売れた。
アメリカの人々は「一時的に一つの事項に興奮」した。リンドバーグ、麻雀、クロスワード・パズル、精神分析、ジャック・デンプシーの試合に7万5千の観客が集まった。
日本の「ほんの昨日のこと」でもある。