都知事として政治の真只中にいる著者。
「・・私は物書きだから、たとえ政治の世界から離れても物を書くという仕事は一生可能だし
日々仕事の甲斐もあるはず・・」という書き出しで紹介する最初の人物が、
“政治”と“仕事”というキーワードを象徴するにふさわしいひとりである海部八郎氏、
いかにも石原氏らしいくひねりが効いた滑り出しだ。
石原氏に鮮烈な記憶や思い出を残していった人物達。それは、政治、経済、文化、マスコミなど様々な分野に亘る。
氏の独特のユーモアを織り込みながら、ムダのない語り口で綴られていく内容は、驚きに富んでいる。
また、カラーを含めて挿入された多くの写真が、それぞれの時代の香りをうまく伝えている。
個人的には、やはり青嵐会や田中角栄氏などについての記述が、さながら短編小説を読むようで面白かった。
一方、趣味のヨットに絡む内容では、まるで10代の少年のように嬉々として数々の冒険譚を語っていく。
なにせ金のかかるヨットにまつわる話題が多いこともあり、スノッブさを感じる箇所は多い。
しかし、懐古趣味でも成功体験を並べ立てたものでもない本書は、痛快であり楽しめるものに仕上がっている。
そして、「あとがき」にあるように本書は「私蔵の美術館」と呼ぶに相応しい出来栄えであるが、
それにとどまらず、個性的であることや未知の世界に飛び込む勇気が今こそ必要なのだ、と我々に伝えようとしているように思える。