10年で売り上げを倍増させた、異能の経営者の回顧。就任早々、ブラウン管ばかりのテレビの時代で「もう液晶しかやらない」と宣言してしまう。しかも液晶は赤字なのに。利益が出ていた半導体生産も「液晶しかやらないから」と撤退する。液晶がテレビの主流にならなかったら…と普通の人なら思うが、ここが常人と異能の違いなのだろう。失礼かもしれないが、10年前はシャープと同規模だった三洋は今や1兆円以上の差をつけられ、10年前以上に苦しんでいる。技術力、営業力のレベルはそれほど違わなかったはずなのに、なぜこんな差がついたのか。経営者の違いとしか思えない。苦境の時期にあえて攻めに転じた著者の判断の経緯がつづられているが、シャープはラッキーだったなと感じた。
著者と同じ理系出身、電機メーカーである経営者ジャック・ウェルチと好対照なのが印象に残った。ウェルチはできない社員の首を切るが著者はしない。先端技術の開発でのし上がったウェルチと、京大を出ながら戸別訪問、販売店応援など泥臭い営業を好んだ著者。だが、共通して言えるのは、大胆かつ正しい決断を下すことで会社を飛躍的に成長させたことだ。いち早くブランド効果にも着目し、知名度ゼロから立ち上げた液晶ブランド「アクオス」を浸透させた術も面白い。ありきたりだが、著者の努力も半端ではなく、売る努力、新製品開発指揮の努力は読ませる。ウェルチのアメリカンドリームも面白いが、日本人にはこういう「努力が実を結ぶ」浪花節的な物語の方が共感できていいな、と思った。邪推だけど、この本もシャープのブランドへの貢献を考えてのものかも知れない。