死を象徴する黒い魔法、その裏返しの時の魔法の対立。本来中立である筈の古い魔法は黒い魔法に染まり、黒い魔法とはまた別に世界への侵略を始めようとする。
魔法といっても、この本から受ける印象は、所謂児童文学ファンタジーとは大きく違います。その理由は「人間に重点が置かれていない」ところでしょうか。この世界の魔法の抗争に於いては、ルミもエルザ、とき老人や源先生もおそらく代替可能であり、敵も見方も属する勢力そのものとなります。敵の攻撃は(よく考えると)びっくりするほど非情です。
といって、殺伐としているわけではありません。ルミの父がルミに向かって「林を歩くのはこの季節が一番いいんだ」と言う台詞など、初めて読んでから何十年も経っていますが、毎年春の林を見るたびに思い出します。
清楚にして呪術的な、穏やかでありながら容赦の無い、なんとも一筋縄ではいかない魅力に溢れた快作です。