ハーディングのイエローレーベルでの第2弾は、なんとオルフのカルミナ・ブラーナ/バイエルン放送響。「なんと」と思ったのは、小澤とかラトルとか、ハーディングが振りそうなレパートリーが先行でかぶっているというイメージのある人たちがよく録音している曲ではあるが、ハーディングがさきに手がけるのはきっとストラヴィンスキーにちがいない、ロマン派ならシューマン(は思ったとおり映像盤で出してくれたけど)かメンデルスゾーン、あるいはハイドン……などと願望まじりに想像をたくましくしていたら、カルミナ・ブラーナ!
キライじゃないし、ヨッフムや小澤やプレヴィンあたりはどれも名盤だと思うが、あんなに派手で、表現としてはいじりようがなさそうな曲をどうするのだろうと、おそるおそる購入してみたら、予想以上のいい演奏であった。小澤の「ビート感をふくらませる」系でもなく、プレヴィンの「横の流れはタイトかつストレート&トルコ楽器で色彩感」の路線でもなく、なのに聴いてみると、うむ、これぞハーディング。楽器セクションごとの音の純度をあげ、見晴らしをよくしたうえで、テンポはわずかにゆったりめで柔軟性をキープ。呼吸を深めにとることで奥ゆきを出し、さらにスケールを大きく聴かせる。
しかもこの人、耳がめちゃくちゃいい。指揮者はみんなそうだろうと言われそうだが、ハーディングは、縦だけじゃなくて横のラインへの集中力と反応がすごい。それもあからさまに気合いの入った「濃度の高い集中力」というより、清澄な印象さえ与える明晰なコントロール感覚。聞こえてくる音の端整なうねりにあわせ、ライブでの全体バランス&爽快なメリハリのつけかたが絶妙。その巧さは特に金管楽器の登場でよくわかる。それと、細部へのこだわりがすごそう。調弦はむろんのこと、フレージングや弦のボーイング&管の息の量とか、そういう「パーツ」の磨き方がただごとではない。これはいいものを聴かせてもらった。合唱とソリストも好演。ゲルハーヘルの余裕をもたせながらの丁寧な歌い方もいいし、プティボンの赤銅を思わせる外連味のある声も(くせがある声なのか音程が……なのか、ときどきわからなくなるのも魅力のうち)この曲にあっている。あらたな定番として長く聴いていきたい録音。