テラナーの協力者ケロスカーの八十年計画と‘それ’のコンセプト投入作戦が功を奏し徐々に弱体化して行く公会議勢力ラール人の動静を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第406巻。本巻の執筆者は実力派新世代作家の競演テリドとフランシスです。前回の348巻695話「不可侵領域」以来本書で実に58巻116話振りに再登場を果たした公会議種族マスティベック人と黒いピラミッドですが、久々でも全くブランクを感じさせず違和感も無くスーッと物語に入って行けるのは流石だと思います。他にも最近の七つの精神を宿す共有体コンセプトのケルシュル・ヴァンネと懐かしいラール人レジスタンスのロクティン=パルやロボット皇帝アンソン・アーガイリスという新旧キャラクターが時空を超えて競演し絡みを見せる面白さが長大なシリーズならではの醍醐味だと言えましょう。
『オリンプでの邂逅』ペーター・テリド著:公会議勢力ラール人の武力の根幹であるSVE艦へのエネルギー補給が突如として断たれる。何故か沈黙を続けるマスティベック人に対し、ヘトソンの告知者ホトレノル=タアクは真相究明の為に武力行使も辞さない調査隊を派遣する。本編では惑星オリンプに隠棲し続けるロボット皇帝アーガイリスが地下基地内に張り巡らせた罠をことごとく克服し退けるコンセプトの活躍がお見事です。また宙航案内者ヴィンクラン人をもぶっ魂げさせたコンセプトの奇跡の技にも驚嘆させられましたが、具体的にどうやったのかが全く書かれていないのと、マスティベック人の真意が結局は最後まで明かされないのがやや残念です。『ホワルゴニウム・ショック』H.G.フランシス著:故郷銀河でラール人の優位が揺らぐ一方、手下の超重族マイルパンサーも爆弾による破壊工作にさらされる。更にゴールン第二惑星でラール人に巧妙な罠を提案するケロスカーの身に危機が迫りつつあった。本編では特殊金属ホワルゴニウムの放射に苦しむケロスカー達と片手がホワルゴニウム腕と化し自棄になった住民の男ジョアンが繰り広げる危険な裏切りのドラマが最後までスリリングで手に汗を握らせます。また父の身を心配する娘を登場させて読者に最初は温かな父娘ドラマになると思わせておいて実は意外な落ちで締めるのが真にブラックな味わいです。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは些か大時代な日本の仇討ちの決め台詞を嶋田洋一氏がローダンとアトランの会話の形で見事に表現した短文を紹介されています。ケロスカーがラール人に仕掛けた罠だと言う「恒星のブラックホール化作戦」の現場で一体何が起きるのか?全く予測がつかず真に興味津々です。更に予告によると次巻ではもうひとつのお楽しみ、あの往年の不滅の友人との再会があるとの事なので、老練な大御所ダールトンの筆裁きに大いに期待しましょう。