素晴らしい。過酷なサスペンスであるにも拘わらず、劇場でスクリーンを見つめながら、この充足感がいつまでも続く事を願い続けていた。イーストウッドの映画はどれも傑作揃いであるが、最新作の「チェンジリング」は、彼が普遍的に名監督の地位を得た「許されざる者」以降の作品群の中でも、「ミリオンダラー・ベイビー」と比肩するほどの心揺さぶられる映画だ。
今作を、“これぞ、映画!”と評した映画雑誌があったが、正に、映画の神話性、情緒性、豪胆性、高潔性、様式美、総てが詰まった気高く力強い作品。未見の方は、取り合えず、まずは劇場に急げ!と叫びたくなる。
で、醒めやらぬ興奮は措くとして、ここは冷静にサントラ・アルバムである。近年、映画音楽の分野にも活躍の場を広げていたイーストウッド自身が手がけたスコアは、どれも美しく叙情的だが、どこか哀感と悲壮感を漂わせる。主旋律は、劇中何度も効果的に流れて印象深いものだが、唯一無比の我が子の消息を狂おしいほどの情念で追い続けた母親の絶望と涙涸れ果てた後の凛とした中の揺るがぬ思いを奏でているようだ。
エモーショナルなピアノ、むせび泣くサックスの響きに、アンジェリーナ・ジョリーの“魂の名演”が甦ってくる。映画の余韻をそのまま引きずるような聴取感が良い。