オランダ・モデルはポルダー(開拓地)・モデルとも呼ばれ、パートタイムと常勤雇用との時間あたり賃金と社会保険の差をなくし、一種のワークシェアリングを全国的に行ったことで知られる。雇用を改善し、不況・失業を克服するために労、使、政府の代表が協議して、労働側、使用者側それぞれ不利な政策をも含む政策パッケージを作成し、これに労、使、政府の代表が合意して実行した。まさに三方一両損にみえて全体として得になる社会契約的政策パッケージであり、利己心にとらわれてかえって全員損をする囚人のジレンマを全員にとって利益になるプラス・サムゲームに転換する契約である。この政策は雇用を弾力化し、平均賃金を一時低下させて雇用を増やし景気を回復させたのだから、新古典派的・ピグー的雇用・景気対策であるが、それを労使合意のもとで行ったところに意義がある。著者が言うように雇用・賃金改革だけでなく同時に社会保障改革、規制緩和と総合的に行ったことも注目すべきである。それに環境政策やNGOの活動に関してもオランダは先駆国であることが紹介されている。
本書は「アメリカ・モデルを参考にすべきだという呪縛にとらわれている」日本人にもう1つの道としてオランダ・モデルを示した点でも意義深い。オランダ人は、コンセンサスを重視するという点では日本人と共通点がある。ただ日本のコンセンサスは関係者の癒着という形の悪いコンセンサスであるがそれを良いコンセンサスに変えることができれば、オランダ・モデルは日本に導入されやすいと著者は言う。現在の日本の不況と失業克服のためにも示唆するところが多い本である。(丸尾直美)
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アメリカ流に女性が男性と同等になることを目標に世帯所得を限りなく1.0から2.0に近づけるという発想には、自己実現=キャリアアップの構図しか見えず、子どもを含む家族関係や各自の人生観をどのようにとらえるかが見えない。しかし、著者も指摘するように人々は様々な理由で、仕事と家庭のバランス、仕事と人生のバランスを求めて闘っているのである。その点からいえば、家族とともに過ごせる時間、もっと自由になる時間を求めて、世帯所得を共働きによって、1.0から1.5へ増やし、余った0.5を余暇など労働以外の時間に費やしたいという生活優先指向のオランダ流の考えは、わが国にとってなんと示唆に富む考えであろうか。これを長い伝統のしがらみの中から生まれた妥協の産物と捉えるか新しいシステムと捉えるかは、読者の考え方如何である。
オランダモデルの特色である合意形成と統合という考え方は、これからの日本にとって大いに参考になると思われる。時間をかけてみんなで話し合う、横断的で統合的に政策を行うなどは、今の日本に欠けていることである。これらのことができることが真の民主主義であるし、問題を本質的に解決できると思う。しかしながら、現在の日本の社会経済システムでは、その実現はなかなか難しい。
今まで、アメリカの社会経済システムを優先モデルとして見てきた日本は、もう一度自国の将来像についてしっかり問い直すべきである。少なくとも、日本が今後もアメリカにぴったりくっついていくことは、多くの弊害を生むのではないか。むしろ、暴走するアメリカに助言を与えるような立場に転換すべきである。
この本に注文をつけるとしたら、もう少し読みやすくわかりやすく表現して欲しいということかな。
日本は規制緩和を進めたイタリアに学ぶべきところも多い。日本の良き未来のために、経済社会改革の重要性・緊急性が痛感させられる一冊といえる。
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