とんどの日本人にとって、東西冷戦は非日常の世界で起こっていることであり、日々の生活では実感することは無かった。だが国境(日本政府は国境と認めていないが)に位置する根室〜北海道東端〜に暮らす人々、特に漁師達にとっては北方四島問題は非常に身近な問題で、日々の生活に大きな影響を与えていた。海を隔てて見える色丹島はロシア人が実効支配している。冷戦時代、漁に出た人がソ連の国境警備隊に拿捕される事件が頻発した。拿捕された人は、ソ連の刑務所に送られ何年間か抑留された。
だが、なぜかソ連に捕まらない船があった。ソ連が実効支配している海は荒らされていないので漁獲量は大きい。いつも大漁で戻ってきた人は富をなし、根室には"御殿"が何軒も立ち並んだ。そのような人はソ連に賄賂を贈ったり、スパイの手助けをしているのだと噂され、「ロスケ船」「レポ船(ロシアに情報をレポートする船)」と陰口をたたかれた。警察も取り締まろうにも現場を押さえられない。ソ連が実効支配している所に日本の警察が行くわけには行かないからだ。ベトナム戦争時には脱走米兵が密出国したとも言われる。
...そんな時に、千歳基地のアメリカ空軍情報将校が行方不明になる事件が起こった〜
よく調べられてるなぁと思う。フィクションかとも思えるくらいだ。この本を書くにあたり著者は根室の漁師に混じって酒盛りをやり、レポ船員に張り付き、公安に聞き込みをし、北海道各地、シベリアをまわり、スカンジナビアまで脱走米兵に話を聞きに言ったという。昭和40年代の北の海の様子が良く分かり興味深い。
この話の主人公は、ソ連に拿捕された真面目な漁師。新婚だった彼が拿捕の5年後に釈放されて戻って来たとき、妻は他の男と駆け落ちしていた。そこから世界が動いていく。