ドイツのテレビ映画として事件発生から60周年記念となる昨年放映され、たいへん好評を博した作品とのことです(検索エンジンで原題の”Stauffenberg”でドイツ語圏WEBをあたると必ず本作品の紹介ページにヒットできます)。鑑賞してみても、一連の経緯を一時間半強の短時間に丹念に織り込むように構成されているのがよくわかります。歴史考証も妥協がないようです。実在した事件参加者の写真と見比べても、登場俳優達は生き写しといっていいくらいです。
留意しておくべきは、鑑賞者がヒトラー暗殺未遂事件について相応の予備知識をもっていないとストーリーについていけなくなるおそれがあることです。中心人物であるシュタウフェンベルク伯爵大佐は、ドイツ国内では小学生以上は知らない人がいないというほど有名だそうですし、最大最後のナチ抵抗運動として民族史から永久に消えることなく語り継がれていくでしょうから、ドイツ人には1時間半の映画でも充分でしょう。しかし、字幕をつけようが吹き替えしようが、日本だと大河ドラマで一年間45本くらいをあてるくらいの題材なので、背景を知らない外国人が堪能するにはハードルが高いのです。
幼児からの洗脳教育、網の目のごとく張り巡らされた秘密警察、密告奨励による国民の相互監視、といったことが当たり前に行われていたナチドイツ政権下での政権転覆陰謀ですから、その準備や同志を集めたり、蜂起後のビジョンを描いたりといった作業は、暗殺実行と同等かより以上に困難を極めたでしょう。しかし、この映画では残念ながらほとんど描かれていません。また、実際には政治家、労働組合幹部、高級官僚、学者といった文民も多く関与しましたが、本作での登場人物は軍関係者に限られます。
本作のできばえが素晴らしいだけに、同じ監督、スタッフ、キャストで描く対象を広げた連続テレビドラマ化を期待しています。