先月、ロンドンで2回目の観劇をして参りました。実際に舞台を観る前にCDを聞いていたのですが、曲と曲の間が間延びしていてダルい、というのが第一印象でした。しかし今回観た限りでは変更された点も多く(例えば”Only for Him”+メグとダンサーの会話は全てカット、”Only for You”+マダムとの会話のみ)、舞台自体はCD収録時に比べて随分とテンポが良くなってきた印象を受けます。また、陳腐なメロドラマとして不評な脚本ですが、私は『オペラ座』のゴシックホラー要素をなくし、キャラクター設定も変更し、ひたすらラブストーリー要素のみを残そうとしたのが『Love Never Dies』なのだと考えています。映画版のようにファントムが爽やかかつ誘惑的で、ファントム・クリスティーヌ・ラウル(今作では+メグ)の三角関係が強調されているため、『オペラ座』舞台版でのファントムとクリスティーヌの関係に納得がゆかず、映画版のロマンチックな雰囲気に惹かれた方には、今作の方が口当たりが良いかもしれません。その意味では、『オペラ座』ファンというよりもファントムファンのための作品だといえます。
さて、音楽に関してですが、前作のようなキャッチーな曲は少ないです。私が最初に聞いて印象に残ったのは、ファントムがクリスティーヌを想って歌う”Till I Hear You Sing”程度でした。その代わり、メロディアスで独特な曲が多いので、何度も聴いているうちにだんだんと引きこまれていきます。今回は、官能的な”Beneath a Moonless Sky”(この曲は映画版の墓場に向かう場面のBGMをアレンジしたものです)や、美しい”Once Upon Another Time”など、前作では案外少なかったファントムとクリスティーヌのデュエットも存分に楽しめます。また、本音と建前のズレがコミカルな”Dear Old Friend”、ファントム・ラウル・マダムの思惑が錯綜する”Devil Take the Hindmost”など、ウィットに富んだ曲も健在です。他の方が指摘されている通り、前作のメロディーが絶妙なタイミングで使われるなど、ファンサービスも充実しています。
そして何より、このCD最大の魅力は主演キャストにあると言っても過言ではありません。ファントム役のRamin Karimloo、クリスティーヌ役のSierra Boggess、そしてラウル役のJoseph Millsonと、安定感のある役者さんを押さえています。中でもRaminのハスキーボイスを活かした”Beauty Underneath”、Sierraが歌うメインテーマ”Love Never Dies”では、圧倒的な歌唱力を堪能することができます。ただし、全体的にコーラスが弱いのが難点で、前作の”Masquerade”のような大合唱はありません。
ウェーバーファンの方、ファントムファンの方であれば、比較的すんなりと受け容れられる作品ではないかと思います。また『オペラ座』ファンの方は、この作品の主題はあくまでも「ラブストーリー」なのだということを念頭に置いたうえで聴いてみるのが良いのではないでしょうか。また、スルメ曲が多いので、一度聴いていまいちだと感じても、繰り返し聴いてみて欲しいと思います。公式サイトのトレーラーなどで、舞台のイメージを持っておくのも良いかもしれません。