人情映画の巨匠フランク・キャプラ監督が描く心温まる物語。その限りにおいて全てがツボにはまっており、実に心地よく感じられます。
傑作西部劇『真昼の決闘』以降、人生の苦味を体現する決心をしたハリウッド・レジェンド、ゲーリー・クーパー。ここでの彼は実に純粋無垢な清らかさを発しています。もしかしたら、むしろこのまっさらで赤子のような清潔感こそ「演技しない大スター」クーパーの十八番なのかもしれません。ぎこちないリアクション、さりげない品格、そこはかとない茶目っ気。こうした彼の魅力が本編では存分に楽しめます。というわけで、本編の成功は彼の生来の魅力に負うところが大いにあると思います。
今の社会ではひんしゅくを買ってしまうかもしれないほどの“現実離れしたサクセスストーリー”ですが、キャプラは社会性に満ちた風刺を要所要所に利かせながら、うまく観客を納得させてしまう喜劇の力学を本編で巧みに駆使します。その力学の要のもう一人、ジーン・アーサーも持ち前のハスキーボイスを活かしてモラル・ハザードの中で揺れる乙女心を上手に表現しています。
最近、『ミスター・ディーズ』の名でリメイクされたほど未だ人気の高い『オペラハット』という20世紀の童話。21世紀を生きる私たちがこの作品を楽しめる理由は、人間そのものがいつの時代も夢とともに生きてゆきたいと切に願い続けているからなのかもしれません。