昔、渋谷のあるホールで、来日したオペラ劇団のオペラを見ていたら、音がどうもおかしい。まるでスピーカーから聞こえている音で、平板に聞こえたので、口ぱくかと思ったが、実はどうもこれは音響設計の失敗だったらしい。実は、今では、どこのオペラ公演も電気音響を使っているのだそうだ。ただ、それが客席から自然に聞こえるか、聞こえないかは、音響デザイナーの腕らしい。また、使わないでは、良いオペラに最早ならないらしい。その辺の事情は、素人には分かり難いため、オペラで、電気音響?それってまがい物じゃないの、と思い勝ちだが、そうではないということを、オペラの歴史、オペラハウスの構造、舞台上ではオケの音が聞こえない、などなど、幅広いオペラの実務的、実際的、工学的な問題を踏まえつつ、オペラ公演における電気音響の利用の実務についてわかりやすく説明している。
本書は、主にアーツマネジメントを学ぶ学生、専門家向けの本だが、生演奏、生音至上主義のオペラ愛好家全体にとっても、有益な本と思う。なるほど、と思うことが満載。