ファウルズという町では、時折空から人間が落ちてくるらしく、主人公は落ちてくる人間をレスキューする野球チームの一員である。
ただし、レスキューチームが役場から与えられているのはバットである。天空高く落ちてくる人間を助ける役にはまずもって立たない。
昼間、町のほうぼうで落下者を待ち構えて、夜になればしけた酒場で時間を潰して家で寝る。
ランダムなタイミングでランダムな座標に落ちてくる落下者が見事頭上から降りてくることはまずないが、それでも男は空をにらんで落下者を待ち構える。
そうした筋の話が、平たく書かれている。
しかし、その平たさは表面がそうであるという話にしか過ぎない。
不思議な作家である。
Aという事象を滑らかに語ったと思えば、すぐさま割引シールをはっつけることで文章の座標を揺らがせていくような手口で世界をつらつらと描き出す。
詐欺師のような手際であるけれど、素朴なつもりで描かれていて、実際の見た目は物見櫓である。説明しようとしても要領を得ない。
しかし、ラストシーンの主人公を思い浮かべると、なんだかかっこいいのだ。むしょうにかっこいいのだ。