女性が男性のスポーツをスタジアムで観戦することを法律で禁じているイラン。そんな、お国事情を考えると、少女達が会場に入場する場面やスタジアムの外周、トイレが画面に登場するこの映画はいったいどうやって撮影されたのだろうか。実際のワールドカップ出場がかかった試合の裏側で作られたこと自体驚きだが、試合結果の如何によっては別の結末も用意されていたのだろうか。興味は尽きない。
しかし、この映画の凄いところは作られた経緯を抜きにしても、十分楽しめる娯楽作品に仕上がっているところだろう。
出演者は全員素人ということだが、あの手この手でスタジアムに入場しようとしたり、捕まった後も試合の経過に一喜一憂し熱狂する少女達が元気でたくましい。すっかり圧倒されて、たじたじの田舎出身の警備の兵士達との遣り取りも面白いし、試合を映すこと無く伝わってくる臨場感も見事だ。
「女性はどうしてスタジアムで試合を観られないのか」という少女達の質問に兵士が「女性に汚いものを見せない為」と答える。 観客席で飛び交う相手を罵倒する言葉やトイレに書き込まれた卑猥な落書きを指しているのだろうが、こんな理由では少女達も、他の誰も納得させる事は出来ないだろう。
イランの女性問題に異議を唱える視点に立って作られた作品ではあるが、映画の最後は街に溢れる民衆の歓喜の渦に巻き込まれたかのように、大団円を告げる。サッカーW杯出場が、何事にも代えがたいほど大きいことを実感する。