歴史的勝利から僅か50日で日本語訳が出るとは、いくら原書が『TIME』誌の編集で、それ故に、対応できるスタッフが揃っているのだろうとは言え、いささか信じ難いところがある。
しかし、『TIME』誌のベテラン腕っこき記者連が3年以上も密着取材を重ね、綿密に練り上げて展開してきた論評だけに、豊富な写真を駆使しながら、冷静で幅広い視点で選挙戦を振り返りつつ、オバマ氏の生い立ちや人となりを丁寧に紹介している。
50日という期間ゆえの拙速さが目につく部分もあるにはあるが、翻訳スタッフがやはり手慣れているのだろうと容易に推察できるので、日本語としてまずまず読みやすい評伝になっている。必ずしも十分という印象はないが、“訳注”もそれなりに挿入されており、理解の助けになる。
アマゾンのアメリカサイトで原書を検索すると、いかにも“らしい”ことに、ハードカバーからペーパーバックまで、いろいろな種類で“取り揃えて”あるようだ。英語に自信のある向きは、いい機会として原文にトライされるのもよろしかろう。
それにしても、国際社会の注目度や国民性などが天地ほども違うとは言え、日本の宰相がこういう形で取り上げられた例を未だ知らない。日本が真に国際社会のリーダー足り得ない理由が、本書が刊行されたことであらためてよく理解できたような気分になったのは、実に皮肉なことである。