民主党の選挙コンサルタントをして一躍有名になったPR会社フライシュマン・ヒラードの田中社長と、日本のインターネット系PRの第一人者で大ヒットした「戦略PR」の著者でもある本田さんが、オバマの勝利のプロセスの内幕や仕組みを解説するのかと、大変期待して読んだが、少し期待とは違った。内容的には「オバマの勝利プロセスの解説」ではなく、「オバマの選挙戦を例に、著者のコミュニケーション・広報戦略を解説」した本。
内容的に、コミュニケーションン戦略の一般的な参考になる箇所は多くある。途中のコラムにある「小泉流メッセージ力学の本流」は、小泉現象をメッセージという視点で解説していた面白い内容だし、第5章の「戦略コミュニケーションの発想」は、社内・社外を問わず、メッセージをより多くの相手に、またはより効果的に伝えたいと願う人には意義がある内容だと思う。実際、「自分が発信したものではなく、相手に伝わったものがメッセージである」などの基本だが忘れられがちな内容には、誰もが反省させられるものと思う。
しかし、全239ページ中、オバマのコミュニケーションの内容等に割かれているのは全体の約4分の1の61ページでしかなく、そこで解説されているオバマの選挙活動の内容も、たいていは一般的に公開されている内容であり、「オバマ・モバイル」という住所録をアドレスでソートできるソフトや、オバマ・ドットコムでのSMO(Social Media Optimization)も、初めて聞く人には新鮮かもしれないが、既にインターネット・マーケティングという観点からアメリカ大統領選を見てきた人には、決して目新しくはない。
というわけで、コミュニケーションやインターネット・マーケティング初心者向けのの、あまり深くないケーススタディとしては価値があるが、オバマの戦術を詳しく述べた本ではない(タイトルと中身が不一致?)という理由で、星は3つのみだが、巻末のオバマのスピーチの対訳は保存版なので、特別に4つ星。