近年の漫画評論って、その表現論的な側面が強いように思っています。作画の技術的な側面や、構図
や省略や書き込みが、どういう背景から可能になっているかといったような。
あるいは、サブカルとしての伝統・継承関係のなかでの位置づけを重視し、何に対する主張であるか、が
問題にされたり(その論敵も、独立した領域としてのサブカル圏内なんですが)。
漫画をめぐる言説のみ参照して、表現としての形式を論じる、と。
フランスの社会学者、ブルデューの主著『ディスタンクシオン』には、芸術作品に対して、その制作の技術
的な側面に注目するのが教養層で、表現の「内容」について印象的に拘泥するのが田舎者なんだとか
いったことが書いてあって(うろ覚え)、ああオレは教養のない田舎者だとガッカリしたりも。
で、本書。
上述の近年の傾向と真逆で、作品の内容を、現実の社会を参照しながら、論じています。
技術論ではなく内容にコミットすると、えてして無内容な自分語りになりがちですが、本書はそれも回避
できているように思います。
とりわけ『闇金ウシジマくん』に関連して、呉智英氏が絶対的貧困と相対的貧困を無意識に混同してし
まっていることを指摘する点など、刮目です。
総じて、現実の暗い側面を参照しつつ、しかし、肯定的で楽観的なトーンに貫かれている点も望ましく、
著者の続刊を待ちたい気分満々です。