トルシエというと、選手との感情的な衝突も辞さないような、
ややエキセントリックな人物という先入観があったが、
本書を読んで、その分析の鋭さと的確さに唸らされた。
笑ってしまったのは、トルシエ自身は周囲と考え方が合わなければ、
「まず対立を作り出し何が問題かをはっきりさせ、
相手と直接やりとりしながら合理的な答えを導き出す」というやり方で、
意図的に軋轢を惹き起こしていた(やっぱり……)のに対して、
はるかに老獪なオシムは、「その点では私よりずっと洗練されている。
シニカルではあるが人当たりがよく、軋轢を生むことなく理詰めでことを運ぶ」
と、自らの「欠点」とされた部分をはっきり認識した上で、
オシムに高い評価を与えていることだ。
むろん、問題点を指摘することも、忘れられてはいない。
本書ではおもに、今年3月のペルー戦までの試合をもとに、
(1)スピードを重視するあまり、溜めがないサッカーになっている。
(2)マンツーマンディフェンスは、世界の潮流から取り残されている。
という2点が挙げられているが、
これらについては、本書でトルシエ自らも予告しているように、
(1)中村・高原という欧州組を呼ぶことで、むしろポゼッション型になった。
(2)ゾーンディフェンスも部分的に採用された。
という解決策が取られていて、ここでもトルシエの見通しは正確だと感じた。
アジア杯については、メディアやファンを
納得させられる一応のノルマがベスト4とされ、
「ハノイに居残ったまま準々決勝で
グループAの第2位チームを破ったときから、
日本の本当のアジアカップが始まる」
と述べられているが、豪州がそこに入って来るとは
さすがのトルシエにも見通せなかったようだ。
本書を通じて、日本サッカーのさらなる発展を願う
トルシエの気持ちがじかに伝わってくるように感じた。
好著だと思う。