13世紀南フランス、ピレネー山脈を望む肥沃なオクシタニア地方を舞台に、キリスト教の一派だが、異端とされ弾圧されたカタリ派を巡る数十年に渡る戦乱の時代を描いた。
中世ヨーロッパを舞台に信仰に絡めとられた人々を描く著者得意のテーマ。今回は特に、オクシタニアの人々が話す方言を関西弁調で描く実験(好みはわかれるだろうが独特の雰囲気を出している)が試みられる。
物語は異端の信者たちが最後に籠城した急峻な山城の跡地を訪れようとする老僧の回想から始まる・・。
政治的な思惑から異端討伐十字軍の指揮を執らされる臆病な小領主シモン。対するのは異端としてローマ法王庁から破門された伯爵ラモン・・。異端側、正統側と、章ごとに中心に描く人物を変えつつ物語は進む・・・。
後半の中心になるのは、商人階層のエドモンと、彼の元を離れ信仰に身を投じる若妻ジラルダのストーリーだ。
かなりの分量のストーリーだが、20数年分の物語になるため展開は頻繁にスキップする。個々の場面では著者得意の猥雑で生き生きといた人物群像が描かれるが、場面が変わる毎に舞台は回転し、登場人物は変わることが、感情移入を妨げる・・。
後半の中心になっていく、妻を追いつづけるエドモンと、ジラルダとの純愛ともいうべきストーリーが魅力的なだけに前半部の混乱(あえて言う)が残念・・・。
ともあれアルビジョワニ十字軍という日本ではなじみの薄い歴史事件を背景に生き生きとした人間ドラマを描いた著者の力量は感心する。
この重厚、圧倒的な物語のラスト、朽ち果てた山城で老僧があるものを見つけるというシーンに、すべてを突き抜けた先にある大感動を覚えた・・。