オキーフの生活空間を、そのまま撮影したモノクロ写真集。
とても臨場感がある。
最初の見開きは、彼女が心の目で見、作品に描いたニューメキシコPedernal山の光景。
地平線が低く、山の上に大きく空が広がっている。オキーフはこう語ったという。
「もしわたしがしっかりと十分にこの山を描いたなら、神様は私にそれをくださると言った」。
セザンヌのように、オキ−フも、山という絶対対象を持ってしまった画家だった。
次が、彼女が使っている途中のパレットの見開き。大小の筆。小さな箱に詰め込まれた絵の具。
主の不在を感じさせるせいか、深々とした不思議な気配を持っている写真(ページ)で、なぜか見入ってしまう。
このへんから、この写真集の雰囲気が静寂感に包まれていることを感じ始める。
オキーフの最初の登場は、自作の絵と彫刻の前で真っ直ぐにカメラを見ている凛としたもの。
そして次が、彼女の午睡を撮影した横顔のアップ。これは言葉の説明を超えた1枚。
くつろいだ表情の彼女も被写体となっているし、庭師や、INCAやJINGOと名づけられた犬も撮影されている。
玄関となっている「黒いドア」にゆっくりと降り落ちる白い雪片。
オキーフがこの家を買った理由は、この真っ黒なドアが気に入ったからだと、写真のキャプションがいう。
中庭のベンチや梯子に降り積もった雪、3月の雪が付着した庭の樹木を見せた後、
ドアの前に繁茂するサルビアに光があたる。
棚の上に無造作に置かれている様々な骨のコレクション。
壁に設置された巨大なエルクの角。
それらは沈黙の静けさを伝える写真だが、見ていると、なにかオキーフに問いかけられているような
彼女のつぶやく声が聞こえてくる気がしてくる。
冒頭のこの部分だけでも、特別な感慨を抱く。
ドアが開かれ、カメラが、彼女が生きた空間に入っていく。
「南側の大きな窓」という写真は、彼女のリビングルームを撮しているが、この上質な生活感はどうだろう。
そこで見えてくる光景は、一枚一枚の写真ごとに神秘が啓示されていくようで、
ページをめくる指がとまる。
「オキーフが初めてニューヨークからニューメキシコ北部に旅したのは1929年で、
彼女は絵画を描くために来たが、やがてそこに定住した。
オキーフにとっては、誰からも煩わされないひとりで過ごす孤独な静けさが必要だった」
というような文章から、テキストは始まっていく。
*これは洋書(原書)の方に対するレビューです。