この映画、父を早くに亡くした娘を必死で育ててきた母が突然リーセント姿の若い男と結婚すると宣言して、娘は反発し、母子関係及び周囲に波紋が広がるのが主な筋だが、その他に複雑な現代的要素が加わっている。
娘は職場のストーカー男に暴力をふるわれて、外出恐怖症、特に電車に乗れない一種のパニック障害を抱えている。その娘の恐怖を、音と画面の一部の焦点がぼける撮影で巧みに表現している。
また、母が女の幸せを突然追求しだしたのも実は余命いくばくという事情があってのこと。
しかし、母は娘を大切に思うことに変わりはないこと、難病に明るく立ち向かうことを示し、その前向きの姿勢は、一時冷え切った娘の心をとかし、娘を励まして恐怖を克服させる。ストーカー問題と心の傷の治癒という脇の筋が、物語に単なる母娘の対立と和解にとどまらない、奥行きを与えている。
白むく姿の母が娘に切々と心情を語る場面が感動的で、大竹しのぶの演技の上手さに感心するが、これは大竹しのぶの世代から宮崎あおいの世代への、これからの映画界を背負って行って欲しいという期待と応援に重なっていると私は感じだか、いかがだろうか。
近年、余命いくばくものの映画が多いが、ラストが湿っぽくないのが良い。