道具としての「叔母−甥」関係は、悪く無いと思います。手垢のついた「妹」モノほどには手垢もついていませんので、面白い関係を軸に据えたといえるでしょう。
『オイ!!オバサン』は、一言だと「高校に、叔母が一緒に入学してきた話」です。
話としては
・ 学校一の美人である
・ 叔母との関係は秘密にしている
・ 叔母は、自宅で同居する
以上3点が、「当然」といった水準ですが、前提になります。
マンガでの先行例は『れすきゅーME』での正行−結花でしょうか。『オイ!!オバサン』での菅子(叔母)は、『れすきゅーME』清水さんと結花を同一化させて、そこから肉欲成分を抜いた形です。主人公、透(甥)は正行と変わるところはありません。
菅子の造形として目新しい部分は「叔母が元愚連隊で、喧嘩にやたら強い」点があります。類似例としては、『オタクの娘さん』での当初ヒロイン、妙子が「昔、バイオレンス活動を少々」と愚連隊だった設定ですが、異なる点は、菅子は今でも暴れる点です。
菅子が喧嘩に強い、今でも凶暴化して暴れる点は、必ずしても物語を阻害させる要素ではありません。おそらく、掲載誌である『月刊チャンピオン』読者層に親しみをもたせるための造形なのでしょう。実際に、その喧嘩のシーンも、愚連隊マンガやカミナリ族マンガに合せています。これはチャンピオンや、別出版社ですが類似誌ヤングキングにあわせているのも、他掲載作品と横並びにした程度でしょう。
しかし、「オバサン」と呼ばれただけで凶暴化する点は、不自然であり、物語を阻害しています。『オイ!!オバサン』では、菅子は主人公以外に『オバサン』と呼ばれると、凶暴化するのです。これはリアリティに欠けています。菅子は、主人公と家族以外に、叔母と甥の関係は知られていません。また、甥との関係で、叔母であることも肯定している。 「オバサン」と呼ばれることで、凶暴化する理由が無いのです。
オバサンと呼ばれ、凶暴化する理由付けがないのです。凶暴化する点はともかく、なぜ凶暴化するのか殆どが語られていない。このため、物語上のリアリティを損なっています。叔母−甥関係にしても、『高杉さん家のおべんとう』みたいに「好きになってはいけない」といったような理由付けをすべきだったのではないか。単純に「甥がイジメや暴力から保護する」ではダメなのか、といった点に疑問を感じます。
凶暴化する理由が明確でないことは、本作品が物語として発展する上で大きな阻害要素となるでしょう。作劇術として、ストーリーやドラマとして面白く成功する上での障害であるのです。実際、菅子が「オバサン」と、しかも牽強付会でそう聞こえるだけでも凶暴化する。「オーバースロー」から「オバサン」を連想し(155-156p.p)させ、凶暴化した点は、物語でのリアリティを損ない、物語への没入を妨げるものでした。実際に、凶暴化も、愚連隊マンガやカミナリ族マンガでの文法に則っていますので「メデューサ」(48p.)「かつて千葉で歴史上最凶最悪と言われた究極の殺戮マシーン」(50p.)と、マンガですが、戯画的に描いてしまっている。この点は、本作品が、単純すぎるギャグ(というよりも、面白い顔で笑わせるレベル)に流れるのではないか危惧されるものです。
叔母-甥関係を前に出した表紙・帯は、購買意欲をかきたてることに成功したでしょう。しかし、物語への没入をに関しては、残念ですが「オバサン」と言われ凶暴化する理由付けで躓いている感がありあます。主人公と叔母との交流と、全く異質の「オバサン-凶暴化」のシーケンスが2層分離してしまっている問題点も、そこに起因するのでしょう。
手垢のついた「妹」ではなく、叔母-甥関係をキーに据えたのは成功です。あとは、オバサンと呼ばれ、凶暴化する理由付けが上手く行けば、素晴らしい物になると思います。