本書が扱う「オイルパステル」は、誰もが小学生時代にクレパスやクレヨンで経験しているものだが、画材としての技術解説書が非常に少ない。数多くあるパステル技法書の一部が、オイルパステルを紹介している程度である。本書は、オイルパステル画技術解説に特化した数少ない書籍の貴重な一冊である。
本書の著者は、高校の美術教師として長い経験があるためか、本書のまとめ方が非常にうまくできている。通常の技法書のように、画材であるオイルパステルの紹介から描法解説へと始まるが、最大のポイントは、実技編における制作プロセスである。風景画5点、静物画、人物画の制作過程が丁寧に紹介され、技術的なポイントが解説されている。さらに、参考作品として100数十点余りの著者の作品が掲載されており非常に良い参考となる。オイルパステル画は、油絵的な描き方とパステル画あるいは水彩画的な書き方があると思うが、著者の画風は淡彩水彩画の方向にあり、デッサンや画風は大変すばらしいと思う。本書は1998年に初版が出され現在は中古でしか入手できないが、ぜひとも再販してほしいものだ。
本書入手時に東日本大震災が起きた。あとがきによると著者のアトリエは宮城県松島町(当時)にあり、掲載されている参考作品も津波で襲われたところを描いたものが多い。著者の無事を祈るところである。