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オイディプス症候群〈上〉 (光文社文庫)
 
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オイディプス症候群〈上〉 (光文社文庫) [文庫]

笠井 潔
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

中央アフリカで発見された奇病。その奇病に冒されたウイルス学者である友人に頼まれ、ナディア・モガールと矢吹駆は、アテネに向かう。目的は、ある資料を友人の師・マドック博士に届けるためだったが、博士は、なぜかアテネを離れ、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島」に渡っていた…。圧倒的迫力とミステリの魅力溢れる本格推理傑作、待望の文庫化。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

笠井 潔
1948年東京生まれ。’79年、矢吹駆シリーズの第1作『バイバイ、エンジェル』でデビュー、第6回角川小説賞を受賞。大河伝奇小説『ヴァンパイヤー戦争』が大ヒットする一方、評論活動でも注目を集める。2003年、『オイディプス症候群』と『探偵小説論序説』が第3回本格ミステリ大賞に選ばれ、小説部門と評論部門のダブル受賞となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 497ページ
  • 出版社: 光文社 (2008/11/11)
  • ISBN-10: 4334745083
  • ISBN-13: 978-4334745080
  • 発売日: 2008/11/11
  • 商品の寸法: 15.4 x 10.8 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 樽井 トップ500レビュアー
形式:文庫
矢吹駆を主人公とした、笠井潔の重厚なミステリシリーズの文庫最新刊です。
 十年余りのブランクの後に復活したこのシリーズの新作は、いかにも「本格」のミステリ小説らしく、絶海の孤島(ギリシァのミノタウロス島というミノタウロスの伝説で有名な島)に浮かぶダイダロス館という館で起こる連続殺人事件ものです。ダイダロスといえば、ミノス王の命でミノタウロスの迷宮をつくりあげた人物であり、息子のイカロスは翼をやかれて墜落死したという神話で有名な人物です。そのダイダロスの名をもつ館は、ギリシアのスアフォキンという島から船でいかなければならない、この館しか存在しない孤島に存在し、この島に集められた人物が一人また一人と殺されていきます。そもそも何のために、こんなギリシャの片田舎にアメリカやパリから種々さまざまな十名のゲストが集められたのか、彼らに共通するものは何なのか?
 非常に限定された情報しか与えられないまま読者は、ミノタウロス島まで主人公たちと一緒に運ばれていきます。
 ちなみに、主人公の駆はむろんのこと名前のとおりに日本人なんですが、このシリーズの舞台はずっとフランスのパリであり、今回も一作目から語り部を続けているナディア・モガールという女性をはじめ、登場人物は彼意外はすべて外国人です。
 さて。
 この矢吹駆のシリーズは主人公と物語の構成が非常に独特で、決して万人向けというわけではありません。というのも、主人公の駆は、哲学や思索、世界の成り立ちなどには非常に関心を持ち、文字通り全身全霊をかけてそれに臨みますが、その反面、食事、女性、娯楽などといったものには一切興味がありません。語り手のナディアがいじましいくらいの努力で自分に目を向けさせようとしますが、全くもってそれらは彼にとっては無価値のようで、彼にとっては思索や彼のいうところの「絶対的な悪」と戦うこと意外には何ものも意味をもちません。これほどにストイックで共感されにくい主人公も珍しいでしょう。
 そして、もう一つ特徴的なのはこの作品の登場人物の多くは、それぞれが哲学を持ち、その哲学のためとあればとことん論戦することも辞さず、またその哲学や信念の実践を躊躇しない人物たちであるということも他のミステリ小説とは大きく違うところであろうかと思います。そんなわけで勢い、登場人物たちはいたるところでかなりの紙幅を使って哲学論議や論戦を繰り広げ、時にはその信念に基づいての犯罪が行われたりもします。京極夏彦の京極堂シリーズとそのあたりは似ているといえなくもないですが、あちらがところどころで笑いを入れたり、登場人物の多くは普通の感覚の日本人なのに対して、こちらはそれぞれのメンタリティがあきらかに違うので、異質な感じは拭えないと思います。
 シリーズを通して読んでいると、テロや左翼の思想信条についの論議も多く、そうしたカラーが色濃く出てくるのでとくに日本人には馴染みがない感覚がずっとつきまとうと思います。
 どうしてここまでくどくどと前提を書くのかといえば、そのあたりを諒解しないでこの本を読むと、あきらかに途中でだれた感じや眠たさを持ってしまうかと思うからです。よくミステリにおいて、作者の語りたいことはミステリではなく、自分の仮説や思想をミステリという衣で語っているだけだというような非難をされる本がありますが、この本はそういうレベルではありません。明らかに、そうした何某かの説を堂々と作中で開陳しています。であるにもかかわらず、ミステリとしてもしっかりと構築しよう、雰囲気もそれが無理がないようにしようとするあまりに、かなりとっつきが悪く、結果として、それを諒解しないで読めば評価はボロボロにならざるを得ない本だと思います。
 かくいう自分自身も作中でのジェンダーについての考察や、自分と他者関係性についての議論などの一部では退屈してしまった(大変興味深い部分も多々あるんですが)口です。
 が、このシリーズそれ自体は読み応えもあるし、内容も非常に濃いと思いますので、そのあたりを買って注釈や説明を多用しての紹介としました。同じ作者でも「ヴァンパイアー戦争」とかはわかりやすいタイプの超能力者もので、ライトノベル風味満載の物語なので、知らずに読めばきっと別人の作品だと思うくらいです。
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By riesu
形式:文庫
賞をとったこともありその時点でハードカバーの小学生の辞書並みの物を購入しました。
矢吹駆シリーズはこの本から入ったことになります。
読み終わった後にどうにもすっきりせず、前小説ともいえるサマーアポカリプス、バイバイエンジェル等も読みましたが、どうも好きになれません。私は登場人物がどの立場であろうと、その人物の立ち位置で読むのですが、主人公の矢吹駆に全く魅力を感じないためか、ヒロインにも毎回おなじみの敵役にも感情移入できません。全てが小説の中の重要登場人物というよりも、役を振り当てられただけの仮面をつけた人物にしか思えないのです。

大好きとまではいえませんが、同じ薀蓄を語る主人公のほうならまだ京極堂の方がよい。
大体どの分野の小説として読めばいいのでしょう。推理小説?いやいや薀蓄本?はたまた批評本?それとも全てを統合したお話として読めばいいのか。
結局全てが中途半端な感がして、矢吹駆がごちゃごちゃと語っているところを除いて推理小説としたら犯人も動悸もトリックも?という感じです。
哲学のことを知りたいなら、哲学者が書いた本を私は選びたい。
中途半端な知識を推理小説の中に無理矢理入れ込んだ気がしてなりません。

無理に小説など書かずに、評論のほうに集中されればいいのにと思いました。それとも評論を推理小説の形で表した新しい試みととらえればいいのでしょうか。
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By トップ500レビュアー
形式:文庫
免疫機能を低下させるウイルス性の奇病「オイディプス症候群」に
感染した友人の頼みで、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島」に
やって来たナディア・モガールと矢吹駆。

やがて島は嵐によって外部との連絡が断たれ、その状況下で、
ギリシア神話に見立てられたような連続殺人事件が起きる……。

前述の「オイディプス症候群」はHIVがモデル。

通常の病原体とは異なり、それ自体毒性を持たないのに免疫機構を狂わせていくこのウイルスに、
意図することなく、神託通りに父を殺して母を犯し、テバイの町に災いをもたらした、ギリシア悲劇の
主人公の名前が与えられているところに、本作のテーマが集約されているといえます。

また、本作では《孤島》という、ミステリにおいては定番の舞台が選ばれていますが、駆は
その本質を「出るために作られた檻、第三項が生じるように引かれた線」と捉えています。

犯人は内と外を同時に鳥瞰しうる第三項に位置すべく、
内と外とを分割する《孤島》という舞台を選びます。

そうして特権的位置を占めた犯人は、内と外を自在に往還し、
関係者を支配しようとしますが、本作においてその目論みは、
内と外の境界を無効化し無差別に襲い掛かる「オイディプス
症候群」という疫病に含意されるものによって、頓挫すること
が運命付けられているのです。

それは、十人もの死者を出す連続殺人事件の引き金となったのが、
悪意のない、ある人物のささいな不注意であったということからも
窺うことができます。
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