哲学をほんの少しかじった事があったので、エディプスの神話については簡単に知っていたのですが(これから読む人のために言わないでおきますね)、実際読んでみると聞きしに勝る悲劇で驚かされました。、読んでいて両目を自ら貫いて苦悶の表情を浮かべるオイディプスの様子が一種の生々しさを伴って迫ってきて、オイディプス王の意識されない業苦が実物はここまで現れていたんだなと感心させられてしまいました。また、簡単に筋を聞かされるだけでは分からない伏線の張り方や登場人物の多彩さも注意しておきたいです。構成も魅力的。悪い予感が徐々に広がって、的中するかと思うと一辺引いて、後は真っ逆さま。こういう筋立ての仕方は推理小説の様で普通のエンターテイメントとして読んでいても十分楽しめると思います。筋は知っておかない方が良かったなぁと読んでみて思わされるほど良くできた悲劇です。
アンティゴネもいいです。こちらは恋愛関係が絡んできてより叙情的でもあります。また、前作(オイディプス王)の続編みたいな感じなので読むのにもそれほど苦労しません。すこし前作と似通った部分が多くワンパターンという気もしますが、インパクトはやはり大きい。この業苦、罪の意識が、かなりの重圧でのしかかってきたように感じます。
余談ですが、書き上げられたのが紀元前だというのにこの翻訳は大変読みやすいです。福田恆存さんは翻訳家としてかなり有名な方ですが、本作も丁寧に訳をされたのでしょう。すばらしいと思います。