これは牡蠣をめぐる愛すべき随筆集。
実はわたしは牡蠣がニガテである。酒飲みとして恥ずべきこととは思うけど。でも、ハナっから受け付けないのではなく、香りは素晴らしいと思っているし、おいしいんだろうな、きっとわたし人生損してるよな、という思いもある複雑なきらいかたである。こちらは一冊全てが牡蠣をめぐるテクストとレシピで展開される牡蠣尽くし。そもそもひとつの食材にとことんこだわった文学の試みというものがわたしは大好きである。味覚の表現は文学の大きな(そしてわくわくする)試みのひとつ。おいしい食事は味覚で楽しむばかりではなく、読書の楽しみとしても成立するものなんである。
ところで、このフィッシャーという人は米国では著明な食文学作家なんだそう。彼女のほかの著作では、How to Cook a Wolfというタイトルがいたく気に入り過去に購入している。どういう意味が込められているのか興味シンシンだったが、どうも戦時中、苦しい時代にいかに食卓をにぎわすか、という知恵をまとめた本なのだそうだ。