私は、「神様からひと言」ですっかり荻原浩にハマってしまって以降、彼の作品は全部読んでいるのだが、最近は、どの作品を読んでも、今一つという感がしてならない。振り返ってみると、私は、「押入れのちよ」を最後に、最近の彼の作品で、満足できたものがないのだ。
この「オイアウエ漂流記」でも、そうした印象は全く変わらなかった。この作品が、無人島での漂流生活を描いたものであることは、本のタイトルや商品の説明で一目瞭然であるにもかかわらず、無人島への上陸までの導入部に80ページもかけるまどろっこしい展開が、まず、冗長だと思う。その後も、無人島での漂流生活のわりには、ラストの約20ページ前までストーリーにさしたる山も谷もなく、きつくいえば、だらだらと書き連ねられているだけなので、正直いって、読んでいるうちに、飽きてきてしまうのだ。
この作品でも、荻原浩のユーモア・センスは相変わらず健在であり、笑いの取り方は、本当に上手いとは思う。ただ、彼の作品をずっと読み続けている者にとっては、前段の仕掛けの文章を、後段の文章で「すかして落とす」テクニックを中心とした荻原浩流の笑いの取り方の手の内がわかってしまっているので、「クスッ」とくらいしか笑えないのだ。この笑いだけで、彼の作品に慣れてしまった読者を引き付けるのには無理があり、もっと作品自体のプラス・アルファの力がほしいのだが、率直にいって、この作品に、それがあるかというと、残念ながら、ないと思う。
私は、最近の荻原作品は、マンネリ気味で、精彩を欠いているのではないかと思っている。次回作では、笑わせるにしろ、泣かせるにせよ、あるいは、サスペンス、ミステリに再挑戦するにせよ、この「オイアウエ漂流記」のような「ゆるい」作品ではなく、もっと、読者をぐいぐいと引き付けて離さない力のある作品を書いてくれることを期待したい。