「幻想文学の名作」という裏表紙の言葉に嘘はありませんが、一読して、しっかりSFを堪能できた、という気分にしてくれる、きちんとしたSFです。
そして文明崩壊後の人類を描きながら、人間の叡智の礼賛や愚かしさの糾弾といったありがちなヒロイズムはこの作家には一切ありません。
文明という情報の枷がなくなったとき、人間はどうやって世界についての物語をはじめるのか。人間がものを知るということ、経験を語るということ、想像の翼をのばすということはそもそもどういう心のもちようでなされるのか。
これらがごくごく自然な共感しやすいこととして描かれています。しかも美しい。名作たるゆえんでしょう。
訳者あとがきはちょっと偏った押し付けがましさがある気がするので、本書を読み終えるまでは読まないほうがよいと思います。