本書は2006年にフランスの老舗出版社アルバン・ミッシェルから刊行された「日本のエロティックな想像力」の邦訳である。
原書は邦訳版よりも大判で全ページカラーの豪華本だ。かなりの高額本であったにも関わらずフランスで異例の売れ行きを示し、現在も版を重ねているという。私はこの本(原書)を数年前に知人から見せてもらったのだが、そこで紹介されている「日本のエロパワー」に正直驚愕し圧倒された。著者のアニエス・ジアール(女性)の日本の性風俗に対する博覧強記ぶりもさることながら、この本で紹介されている性的イコン・表象の多くは、私が見たことも聞いたこともないものであり、凄まじいエネルギーをもって迫ってきた。フランス語はわからないので、当時は図版をただ眺めているだけだったが、この本から、森口裕二の少女画や田亀源五郎のゲイ・エロティック・アートなどの存在をはじめて知った。
現在、日本の漫画・アニメ、カワイイ文化などが海外で受けていることから、御用学者や役所の連中も日本のソフト・パワーを世界に広めるのだと息巻いているようだが、そうした甘ちゃんたちが、この本の醸し出す毒気に晒されたひとたまりもないだろう。そもそも文化とは、連中が考えているような口当たりの良いものでもなければ、国威発揚の道具でもない。
かつて19世紀のヨーロッパで日本文化が紹介され、ジャポニズムと呼ばれるカルチャームーブメントが巻き起こったが、その大きな牽引役となったのが、浮世絵春画など、江戸のエロティック・カルチャーだった。
同様に、この21世紀において、日本のエロが世界のサブカルチャーを堂々とリードしていることをこの本は教えてくれる。国威発揚やソフト・パワーがお好きな方々は、先ずはこの本を教科書にして、世界に冠たる日本のエロ文化をお勉強してもらわないと、今後、大きな顔して日本文化を語ることなどできやしません。