いかにもガルシア=マルケスらしい「物語の語り」に満ちている短編集。
日本に住む自分からは想像できないようなこと(天使を捕まえたり、海からバラのにおいが漂ってきたり)が、まるで日常のように起きる。
ラテンアメリカとはいったいどんなところなのだろうと、否が応にも想像力が踊る。
訳者があとがきに書いていたことだが、こういったことは、本当にラテンアメリカでは起こる、だから西欧のように手練手管を使う必要はないのだという、地元の人の話を読んで、訳者と同じくらいびっくりしてしまった。
魔術的リアリズムと呼ばれる彼の特徴はじつは手法ではなく、日常のリアルであるらしい。
それにしても、マルケスは娼婦に特別な思いを抱いているようである。
「エレンディラ」のベッドのシーツをしぼるシーンなどは、そのまま「百年の孤独」にあった一場面でもある。
物語が別の物語とつながって、彼の作品はすべてひっくるめて、ひとつの大きな物語になっている。
だから、長編の方がいいとか、短編の方がいいとかの評価はつけがたい。
やはり、表題「エレンディラ」が傑作。
とても印象的で、映像として心に焼きつくラストである。