前作でディープなソウル/R&B路線を展開したアリシア。この4作目では、その方向性を大きく転換してきている。
初期に見られたようなヒップホップ色濃いナンバーはすっかり姿を消し、より大きな括りのポップソング集となっている印象だ。客演したJAY−ZVer.の『EMPIRE STATE OF MIND』を、自身の楽曲としてリメイクした最終曲も、アリシア流のメロウな王道スローバラードに、完全に形を変化させて収録している。
また、全編通して感じられるのは、アコースティックな鍵盤よりも、シンセ等のエレクトリックなインストゥルメンツが前面に押し出されていることだ。曲によっては、ビョークなんかのエレクトロニカっぽさを彷彿させるものもあるくらいだ。
つまりは、従来のように、R&Bのフィールドに軸足を固定させての作品つくりに拘ることなく、より開かれた間口を自身の楽曲に与えている、ということじゃないかと思う。
それは、アルバムカバーのアートワークにも表現されているように、僕には感じられる。
前作までは、明らかに、ブラックミュージックの作品であることを意識した、割とダークなグラフィックが使用されていたと思うのだが、今作においては、抜けるような青空と眩いばかりの素肌が印象的な、極めて健康的なものとなっている。
こうした変化に、確かに僕も最初はやや戸惑ったのだが、聞き込んでいくに連れて、やはり彼女の楽曲は素晴らしいなと思えるようになってきた。
アレンジやプロダクションがどう変わろうとも、基本となるソングライティングが完璧だから、すぐにリスナーの側も、音作りの多彩な変容について行ける様になると思うのだ。
前3作に比べ、やや地味な面はあるかもしれない。
それでも、僕は本作が好きになれたし、今までの作品に負けず劣らずの、傑作アルバムだと思う。