2008年6月に亡くなったワトソン博士の
最後から2番目の作品。
この作品の存在は、福岡伸一氏の
「動的平衡」の中で知った。
福岡氏は、本著の翻訳者でもある。
ワトソン作品には「未知の贈り物」で初めて出会い、
「生命潮流」で人生観が変わるほどの衝撃を受けた。
その後、著書の中の、
「百一匹目のサル」や「グリセリン結晶化」など、
ねつ造が指摘され、ある意味読者の信頼を失ったともいえるが、
彼が描き出す様々な仮説は、どれも説得力があり、
魅力的で、翻訳された本は必ず買ってきた。
「エレファントム」は、
そんなワトソン博士の集大成ともいえる作品。
少年時代に過ごした南アフリカの自然と、そこで遭遇した
象にまつわる不思議な体験…。
その不思議な体験を解き明かすために、彼は生物学を志し、
さらに様々な分野を遍歴していく。
その過程で、ちょっと怪しい、でも魅力的な
例の仮説に出会っていく。
「水生のサル説」
「ヤコブソン器官」
「生命潮流」などなど…。
そういう意味でも集大成である。
なぜワトソン博士が「スーパーネイチャー」など、
少し危うい世界に踏み込んでいったのかが、
この本を読むと納得できた、と思う。
第6章の最後に出てくる雌象と雌シロナガスクジラが、
海岸で超低周波で交流するシーンは、ほんとうかな、と思わせるが、
象徴的で、とても美しい。感動する。