矢野健太郎先生の数学エッセイ集です(初版1958年)。当時の高校生向け(or それ以上)を意識された内容ですから、数学好きな人なら十分読めます(が、頭はそれなりに使います。脳トレ?(笑))。
本書の内容:(1)エレガントな解答(朝日新聞の連載 全10回)、(2)趣味の数学、(3)パスカルの定理、(4)アインシュタインと相対性理論、(5)現代の数学、解説(一松信)
(1)は「頭の体操」(多湖輝)の数学問題みたいなモノを出題し、一般読者のエレガント解答を紹介する内容。一つの問題を多角的に捉えるという意味で面白い。学生に同じ試験問題を出して「前回の解答と違う方法で解いてみよ」と言ったアインシュタインの逸話を思い出します。ここの内容は「子どもに教えたくなる算数」(栗田哲也)にも共通する話題があります。(2)の中には「うまい計算法」というのがあり、今流行りの速算術(例:×25=×100÷4)の一部が紹介されている。(速算は別にインド人の専売特許ではないのです(笑)) (3)が本書で一番長く、最も読み応えあり。パスカルの定理を初等幾何学的解法(2つ)、解析幾何学的解法、射影幾何学的解法の4つを詳細に解説している。円錐曲線、デザルグの定理、パスカルの定理の射影幾何学的意味について理解できると「Aha!体験」を味わえます。(^-^)v 巻末の一松先生の解説も素晴らしい(→ デザルグの定理の2次元と3次元での性格の違い。スタウト代数での意味付けにも言及)。(4)は特殊相対性理論の入門的記述、(5)は集合論・位相・幾何に関する現代数学のあらまし、これだけではモノ足りないので「無限と連続 ― 現代数学の展望」(遠山啓)をオススメします。
総じて本書は「数学の考え方」(矢野健太郎)・「数学入門」(遠山啓)・「数学的センス」(野崎昭弘)などの良質な数学エッセイ・リストに加えられるべき一冊です。