フランスでは『ローランの歌』、ドイツは『ニーベルンゲンの歌』、イギリスだと『アーサー王』といった英雄伝説が有名です。
スペインの代表的英雄武勲詩が本書『エル・シードの歌』ということになるでしょう。
文庫本としては、ほんのちょっと厚めだけど読み易いです。
英雄伝説と言っても完全なフィクションとは限らず、例えば『ローランの歌』にしても史実を題材にしています。もちろんかなり脚色されてはいるのですが。
本作もまた、レコンキスタ期イベリア半島の史実を素にした作品だそうです。そして詳細な註釈から読み取れるように、かなり生々しく現実的な中世世界を描いているようです。
現実路線だとどうしても主人公の活躍が地味になりがちなのですが、本作では実在人物でもあるエル・シードがかっこよく、それでいて人間的に描写されています。
当然脚色もあるのでしょうが、作中に鮮やかに描かれているエル・シードの獅子奮迅の活躍は、国土を回復しつつある当時のスペインの勢いを巧みに表現しているのかもしれません。