2009年からシドニー交響楽団の首席指揮者兼アーティステッィ・アドバイザーに就任したアシュケナージによるエルガー・チクルスの第2弾。今回は交響曲第2番の登場。イギリスのオーケストラとも縁の深いアシュケナージがあえてシドニー交響楽団とこれらの「イギリス音楽の本線」的レパートリーに挑むのが興味深い。
エルガーは存命中に交響曲を2曲完成させていて、これと別にアンソニー・ペインにより補筆完成された「交響曲第3番」があるが、今回のシリーズで収録される交響曲は2曲のみのようである。
第2番は第1番に比べて地味な存在で、それというのも第1番が優美で親しみ易いメロディーを持っていたのに比べて、第2番ぱっと聴いてすぐにインプットされるような性質の音楽ではないからだ。しかし、第2番は不安や内省的な葛藤を含んでいて、時折その感情が外側に放出される先鋭的・近代的な起伏があり、ヴォーン・ウィリアムズの「第6交響曲」に当たる作品とも言える。作曲者が感受した当時の負の空気が随所に見られており、それを感じながら聴いてみたい曲だ。
アシュケナージのタクトは冒頭から明快で、インテンポで進みながらも「負の感情」が放出される瞬間に、刹那に飽和したエネルギーを発していく。特に重量感のある金管の響きを決然と鳴らさせている。ここらへんは逆にイギリス本国のオーケストラだと、ここまでストレートな表現は困難だったのかもしれない。中間楽章の沈鬱する部分も掘り下げがされていて、従来のこの曲のイメージを変える様相を持っている。終楽章はそれでも明朗な開放感が強くなるが、ところどころの陰りが印象的だ。
思うに、この演奏は「従来のエルガーの交響曲第2番」と異なったインパクトを求めた演奏と言える。「従来と違う」ことへの評価は人によって千差万別ではあるが、私の場合、この演奏を聴いて、「この曲はこういう曲だったのか」と思った。一つの意味深な提案を含む録音と思う。