アシュケナージ指揮シドニー交響楽団によるエルガーのシリーズが本盤をもって完成となる。これで終わってしまうのがもったいないくらいの見事な録音となった。
エルガーの行進曲「威風堂々」は第1番から第5番までが作曲者の存命中に完成されたものであり、ここでは加えてアンソニー・ペイン(Anthony Payne)により補筆完成された第6番も収録されている。アンソニー・ペインはエルガーの交響曲第3番も補筆完成させている。
さて、「威風堂々」の第1番はだれもが聴いたことのある名旋律で有名だし、他の曲も親しみ易いものばかりだが、これら全曲を収録したディスクというのは意外に少ない。なので、国内盤で第6番まで収録した本ディスクは、ライブラリのエアポケットを埋めてくれるという点でも貴重だ。そして演奏が良い。いかにも颯爽としたスタイリッシュな仕上がりで、冒頭から金管、弦楽器の切れ味が鮮やか。行進曲らしい快速テンポで、不必要なタメがない。第1番のコーダの各楽器がそれぞれ鮮烈な主張をするシーンなど、実に色鮮やかで決まっている。第2番の洒脱さも、過度におどける表現ではなく、シャープで高貴な音楽になっている。第4番や第5番も音楽自体が魅力的な上に、軽快なタクトで淀みのない仕上がりがうれしい。
併録されている「弦楽セレナーデ」も見事。私はかつて、この曲をイ・ムジチ合奏団が1985年に録音した名演で知ったのだが、アシュケナージのディスクは明らかに一時代新しい音色がする。インテンポで締りのよい音色で、末尾の後味がすっとしている。シドニー交響楽団の弦楽アンサンブルの絶対的音色の美しさも特筆したい。第2楽章の内省的とも言える耽美性は、ひょっとしてこれがエルガーの書いたもっとも美しい音楽なのではないだろうか?と思わせてくれる。
それにしてもアシュケナージとシドニー交響楽団のハイレベルなシリーズにより、少し手薄感のあったエルガーの国内盤ディスクが一気に充実したという実感は深い。