この良書, と言うよりは重要な書籍の邦訳がよい訳で出たことはまずもって慶賀としなければならない.
しかし二つの課題がある.
第一に本書の原書が出たのは2003年. 本書は「本当の:-)オブジェクト」のベスト・プラクティスをうまいキーワードでうまくまとめているとは言え, 2003年当時でも新しい知見に満ちあふれているわけではなかった (もちろん新しい知見に満ちあふれてさえいればいいと言っているわけではない). 現時点で技術的/方法論的に重要なポイントが, 本書には抜けている場合がある.
次に邦訳書名がまさに言い表しているとおり, これは「エリック・エヴァンスの」DDDなのである. ドメイン駆動自身は古くからある有力な考え方でもあり, 「エリック・エヴァンスのではない」さまざまなDDDがあるということだ.
原書出版からの8年間に我々は何を学び, 何を手に入れたのか. これからどちらに向かって何をしなければならないか, 「自分たちの」DDDを創り出すことができるのかどうか. その出発点として, 本書は (いささか遅きに失するとは言え) 最適であるとは言えよう (残念ながら他に見当たらない...). 平鍋さん, これは最終形ではなく, 出発点なのだ.
今になってなぜDDDが盛り上がっているかについては考えるべき部分もないではないが, この盛り上がりが表面的な「DDDマンセー」となって, 今まで偽オブジェクトや偽パタンや偽モデリングや偽アジャイルで繰り返されてきた, 訳の分からないものになり果てないことを祈るばかりである (このアマゾンの「商品の説明」に書かれていることが既におかしいよね?).
2011.08.24追記
コメントにあるとおり「商品の説明」は差し替えられてまっとうなものになったようでなによりです.