この本はいわゆるブランド論の本ではない。 体系化され整理されてはいるものの、その内容はいかにブランドが「人間」とかかわっているかどうか、という視点によってすべて構成されている。 著者のゴーべ氏の言うEmotionalとは単なる情緒的ベネフィットのようなものではない。それは感情であり、感覚であり、バーンド・シュミットの言うところの「経験価値」なのだ。(ちなみにゴーべ氏とシュミット氏は友人である) 彼自身がデザイナーであることもあって、研究者のように理論的になり過ぎずに彼の実務的経験から、ブランドとは決してただの商品や機能ではなく、人間を揺り動かすものとして価値があるものであるという捉え方からEmotionalという言葉を導き出しているのである。この姿勢はこの本をより広い読者が受け入れやすいものとして読ませるだけでなく、これまで理論的な研究からは結びつきにくかったデザインなどのブランドの表現を形式的で任意のものという二次的な立場から、本質的でより意義のあるものに変えさせる説得力を持っている。 英語も読みやすく示唆に富んでいるので、特に理論的すぎるRationalなブランド論が特になじめないクリエイティブやマーケターの方におすすめしたい。