家族の再生という重いテーマを軽妙で洒脱(しゃだつ)な印象にしているのは、手紙を読むためには詩集に隠されたパスワードを解かなければならないというユニークな設定だ。パスワードは、文章のはじめの文字の組み合わせだったり、なぞなぞだったり。一緒になって謎解きに参加しているうちに、登場人物たちに感情移入してしまうという仕掛けが意外で楽しい。ともすれば説教臭く受け取られがちな老人の言葉を、ゲーム感覚で伝えるという著者の思惑は十分に成功しているといえるだろう。
もちろん、ハリーの手紙そのものも「農夫とラバの話」「王様と3人の息子の話」「お金の話」など、ユーモアたっぷりで示唆に富むものばかりだ。手紙がひも解かれるたびに心の中に静かな波紋を投げかけられるローラたちはやがて、頑固者で変わり者にしか見えなかったハリーの、家族を愛する本当の思いに気づいていく。父親との和解、夫婦のきずな、家族愛など、ハリーの手紙の中には、人生をよりよく生きるためのヒントが息づいている。読者もまた、自分にとって大切なメッセージを手紙の中に発見することになるに違いない。(中島正敏)
ハリーは、もう自分の人生が終わりに差しかかっていることに気づいていた。アルツハイマーの症状もある。2、3日前にはトイレと勘違いして前庭のアプローチで小便をしてしまったし、うがい薬だと思い込んで洗剤で口をゆすぎそうになった。そしてとうとう毎週会いにきてくれる孫娘を判別できず、唾を吐きかけてしまったらしい。そんな自分が苛立たしくもあり、なによりもこんな姿の自分が愛する孫娘の記憶に残されると思うと耐えられない。
男手ひとつで育てた子どもたちとは心が通わず、クリスマス以外には会うこともない。だが、孫のエミリーにだけはどうしても、ほんとうの自分を知っておいてほしかった。そのための手立てはもう何年も前から考えていた。残されたあと少しの時間でどうしてもこの仕事を完成させなければならない。
そんなある日、ハリーは眠るように死んだ。
息子のボブは、父の死にも不思議と悲しみを感じなかった。
ハリーが残したものは、自分の手で建てた古い家と自作の詩集だけ。だがある日、一篇の意味のないようにみえる詩のなかに、秘密の言葉が隠されていることにエミリーが気づいた。
エダブラー ミダブラー りっぱに いえる
からくり くりだす れいかん たかまる
パズルも スットンキー わかれば あたる
ドキドキ はらはら えいえんの とき
この詩に隠されている言葉、それは、ハリーがコンピュータに残したエミリーへの手紙を開くためのパスワードだった。
それから、ひとつひとつの詩に隠されたパスワードを探すために家族はいつしか力を合わせていく。パスワードがひとつ見つかるたびに、一通の手紙が開かれていく・・・・・・。
いったい、ハリーが本当に伝えたかったことはなんなのか?
父の想いとは? 夫婦とは? そして家族とはなんなのか?
『エミリーへの手紙』には、笑いと涙と謎解きと、そして子どもに語り伝えたい物語が散りばめられている。
エミリーへの手紙は、すべての人々に宛てられた手紙です。
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心に残る名作,
By ゆこりん (北海道) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: エミリーへの手紙 (単行本)
詩を読む楽しさ、詩の中に隠されたパスワードを見つける楽しさ、そして、そのパスワードで開かれるメッセージを読む楽しさ。この本には三つの楽しみがあります。ハリーが遺したメッセージ・・・。それは読む人全ての心に響きます。「人が人として生きていくうえで大切なことは何か?」ということが切々と書かれています。誰もハリーの心の奥にあった思いを知りませんでした。「同じ材料からさまざまなお菓子が作られるように、人も与えられた同じ材料をどう生かすかで、さまざまな人生を作ることが出来る。」「人生の選択は裕福か貧乏かでもなく、有名か無名かでもなく、善か悪かだ。」メッセージをひとつひとつ読むことにより、残された家族はハリーの深い愛情を知り、そして徐々に家族の絆を深めていきます。ハリーの思いをしっかりと受け止めたとき、彼らは自分たちの人生を見つめ直します。そしてこの本を読む人もきっと自分の人生を見つめ直すことでしょう。いつまでもいつまでも、心に深く残る作品です。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
愛情たっぷり。,
By かおり&やすらぎ (東京都渋谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: エミリーへの手紙 (単行本)
頑固じいさまハリーは、ただものではない!! やってくれます。(笑)手紙を読むためには詩集にあるパスワードの暗号を解読しなければならない。 そのパスワード解読法は、ユーモアたっぷりのなぞなぞや文字合わせ。 大人への成長過程で身に付いてしまった“欲”や“薄っぺらいプライド”“損得勘定”が、解読作業とハリーからのメッセージを読むことで、どんどん純化していきます。 強さを秘めた優しさ、親もひとりの人間であることを教えてくれる本。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
幸せになれる。,
By
レビュー対象商品: エミリーへの手紙 (単行本)
私はこの本を発売と同時に買いました。「アメリカで売れているらしい」というだけで‥ 読み始めて最初の方は少し悲しかった。 ハリーの老いて行く姿を想像しては寂しくなるので 読むのを途中で辞めてしまおうかとも思いました。 でも、3分の1を読んだ位だろうか、 ハリーが残した詩集が発見されたあたりから 寂しさなんてどっかへ行ってしまった。 エミリーが詩の中に隠された暗号を見つけた瞬間から 感動する。素直に心に響いてくる。自分の人生を真剣に考えようと思わせる。 これ以上の内容は秘密にしておきましょう。
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