冒頭のクリミア戦争の容赦ない残酷シーンが、大分後の時代に活躍するエノーラとどんなふうに繋がっていくの?と思っていたら・・・まさか、単なる脇役だと思っていた人が、事件に深く関わるとは思っていなかったので、相変わらずの掴みの巧さに忽ち引き込まれ、読了までノンストップ。必ず偉人伝に収録される、あの“白衣の天使”をこんな風に描写するとは、さすがスプリンガー。傷ついた兵士をランプを灯して訪れる、という女らしさを強調した美談ばかりが印象に残る偉人伝には、ちぃーとも感動しなかったんですが。実際の人柄はどうあれ、手紙魔であったのは確かだし、強靭な精神の持ち主でなければ、地獄の野戦病院で軍人相手に看護の必要性を訴えつつ働く、なんて不可能だった筈。ナイチンゲールの強さとしたたかさを上手くエノーラの活躍と絡めるストーリー運びは巧みという他ない。ナイチンゲールの人物造型が際立つぶん、今回はエノーラの印象がやや薄いかも。だけど、このシリーズも後1冊!どんな結末を迎えると、シャーロキアンの皆さんは予想されてます?やっぱりエノーラにはホームズが尊敬を込めて呼ぶ“あの女”になって欲しいな、と私は願ってます。