当書は、本年(2011年)7月10日に上梓されたもので、まさにこの1ヵ月後に出版された『
大転換する日本のエネルギー源』(アスキー新書)の言わば“原理論”と位置付けられよう。従って、前掲書との内容的な重複もあるのだが、本書では、エネルギーアナリストである石井彰氏の「エネルギー問題」に対するアプローチやスタンスなどが理解できる論考となっている。則ち、エネルギーと環境、経済、人口の関係について、人類史・文明史と物理的・生物的な基盤との関係から上向展開し、さらに「エネルギー産出/投入比率」や「エントロピー」といった概念も駆使しながら、「エネルギー論争」で見失いがちな問題の本質に肉薄している。はじめに、こうした石井氏の論述に関して、若干の異見を差し挟んでみたい。
先ず、当著では「CO2(二酸化炭素)削減」をエネルギー問題のキーの一つに挙げている。だが、例えば本年7月25日に刊行された深井有氏(中央大学名誉教授)の『
気候変動とエネルギー問題』(中公新書)によれば、温暖化の原因となる気候変動は「宇宙線」や「水の働き」なども影響を与えている、との最新の知見を示し、「地球温暖化防止のためのCO2削減キャンペーン」の欺瞞性を指摘、「京都議定書」(1997年)からの脱退すら説いている。そして何より、深井氏も述べるように「CO2温暖化主因説」が“チェルノブイリ”以降の「原発推進の隠れ蓑」(同書)となった可能性も否定できないのだ。石井氏のエネルギー源としての「原子力」に対する立場も「CO2排出削減」に重きを置き過ぎている嫌いがある。
この原子力による発電(プラント)に関して、私は「安楽死」させるべきと考える。全国の原発や実験炉等を独立行政委員会たる「原子力管理委員会」(仮称)の下で一元的に“国家管理”し、「福一事故」の収束と他の原発の「廃炉」を早急に目指すべきでなかろうか。それはともかく、本書にある「従来型の石炭火力発電所」を「最新型の天然ガス・コンバインドサイクル発電所」に切り替え、天然ガスを活用したコジェネレーションを進め、風力発電等の再生可能エネルギーも「倫理的義務」として最低限導入し、「スマート・エネルギー・ネットワーク」を拡大すべきだろう。また、天然ガスを主力化するに当たって、一度は頓挫したロシア・サハリンとの「ガス・パイプライン」構想を復活し、調達先の多様化も図るべきだ。