現在のコンピュータは、メモリにプログラムを常駐させ、データを出し入れしながら動作するものが主流を占め、「ノイマン型コンピュータ」と呼ばれている。周知のこととして「プログラム内蔵型コンピュータ」を開発したのはジョン・フォン・ノイマンということになっているが、本当は彼ではなくエッカートとモークリーによるものであった。本書には、この間違った認識が今日に至っているいきさつが詳細につづられている。
導入部では計算器の開発(パスカル、ライプニッツなど)についてまず説明され、続いて初期のコンピュータの歴史についても解説されている。最初のコンピュータ(汎用電子計算機)であるエニアックが2人の開発者によって開発された3年間と、その功績をめぐる30年間に登場した多くの人々の証言を取り入れ、努めて客観的に著している。著者が判断するのではなく、できるだけ読者が判断できるように材料を提供している。
原書が刊行された後、ネット上の読者書評などで事実誤認の指摘がいくつかあったようだが、訳者は残念ながら著者とその読者に確認が取れなかったのであえて原書のまま記述している。
コンピュータ技術者にはもちろん興味を持って読むことができるが、一方でコンピュータ開発を背景にしたエッカートとモークリーの人間ドラマとしてもおもしろい。技術者以外の人にも広くおすすめしたい1冊である。(大塚佳樹)
(日経Linux 2001/10/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話
発明の歴史をひもとくと,電球のエジソン,飛行機のライト兄弟のように発明家を特定できるものと,自動車や蒸気機関車のようにほぼ同時に複数の人々が実現したものに分かれる。コンピュータはどちらだろうか。1945年に最初の電子式コンピュータENIACを開発したのはエッカートとモークリーだ。しかし二人の功績は,数学者フォン・ノイマンに奪われてしまった。ノイマンといえばゲーム理論を創設し,自己増殖機械の理論を考案するなど,天才科学者の名をほしいままにした著名人だ。一方の二人は「科学者ではなくエンジニアにすぎなかった」のである。
功績を奪われた格好の二人は,世界最初のコンピュータ専業メーカーを作り商業化を進める。しかし,商業化ではIBMに勝てなかった。IBMは後発だったが,1930年代にすでにコンピュータの研究を開始しており,量産化で先行したからだ。コンピュータ開発の人間ドラマが,この本で読める。
( 日経ソフトウエア)
(日経ソフトウエア 2001/11/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
登録情報
|
そういう観点で見ると、本書の帯にある「ノイマン、お前だけは許せない!」などというコピーは余計なもののように感じる。実際このコピーを見て買うのを躊躇いもした。ただ、ENIACという名前に懐かしさを感じる人にとって、やはり懐かしさを感じる社名や人名が出てきて、楽しめる本であることは間違いないと思う。
|
|
|