今から330年以上前の1677年、オランダの哲学者スピノザの作品として、友人たちの手によって刊行された倫理学の哲学的研究書の翻訳。他に岩波文庫の2分冊本や、みすず書房の抜粋本がありますが、こちらは1冊本で、文字も大きく、他にはない図解した部分もあり、とても読みやすくなっています。
著者の独特の宗教観や時代背景を色濃く反映してか、冒頭の「神について」から読んでいくと、あまりの風変わりな書き出しに、300年以上たった、それも異国の現代人にとっては、途中で文意をたどるのが苦しくなります。
思い切って、あいだを飛ばし第3部「感情の起源と本性について」をめくり、腰をすえて読み進めていくと、これが実にすっきりと呑み込みやすい記述にあふれ、思わず膝をたたきたくなるような表現に出くわします。定義・公理・定理・備考などという構成が気にならなくなって、ジグソーパズルがうまくは待っていくような充実感に襲われます。読み方としては邪道かもしれませんが、困ったときにしか「神」のことを考えない者としては、後ろからもどって読んでいくのも面白いかもしれません。
神、精神、感情を幾何学的に分類・分析し、人間の幸福を考察する記述の特徴は、スピノザが生きていた当時も、そして現代でも十分にその新鮮さを失っていないように思います。聞けば、のちの近代哲学や人文科学に多大な影響を与えた作品とも言われているそうなので、その一端でも嗅ぎ取れるように、困難な読解を続けていこうと思います。
「すべて高貴なものは稀であるとともに困難である」で締めくくられる記述は、この「エチカ」のことではないでしょうか。