本書が北欧神話伝説の文献として優れていることは疑いない。しかし最大級の賛辞を本書に贈ることは控えたいと思う。本書は2種類あるエッダ、すなわち韻文と散文のうち前者を中心に収録してある。同書が今なお版を重ねていることは我々読者にとって大変意義のあることで、韻文エッダは小粒なものが多く、訳出によっては軽視されても文句の言えないものもあるところを、すべて収録してくれているのである。ところがである。『スノリのエッダ』で名高い散文エッダに関しては「ギュルヴィたぶらかし」のみにとどまっている。この理由は、スノリが他の部分では北欧の神々を英雄として扱っていることなどが原因と思われるが、しかし本当に、北欧神話伝説の原典に接したいと願う読者の意に沿うものであるかどうかは疑問だ。というのは散文の他の部分では、よく知られた話(例:女神イドゥンの話)も含まれているからだ。訳出にあたっては、しばしばこのようなことが起こる。(他に理由があるにせよ)おいしいところだけを取って、他は割愛という名の省略を行うのである。とはいえ、この感想が、関連書籍があふれる現在の幸福な状況に由来することも否めない。というわけで、その先はこれからの出版業界に期待したい…と、『スノリのエッダ』全訳を手に取る日を夢を見ながら、このレヴューを書く次第である。