今野敏。巧い作家というのが、まず第一印象。警察小説、SF、伝奇もの、アクション小説などなど、何を書かせても巧い。ストーリーテリングという面において言えば、当代随一の作家といっても過言ではないと思う。
ただし、今野作品には、いつも何か物足らなさを感じてしまう。巧いし、面白いんだけど、「100%満足!」とは言い切れなかった。
そして、この『エチュード』も同じように、物足らなさを感じてしまった。
では、その物足らなさはどこからくるのか。それは、物語設定の根底にある、“ご都合主義”だろう。
この『エチュード』のストーリーのカギを握るのは、警察庁から派遣された心理調査官なわけだが、事件の情報が蓄積されるにつれて、心理調査官は犯人の行動を的確に予測していく。まるで見てきたかのように言い当て、事件解決に導くわけだが、心理調査官の予測の精度が上がる毎に、「そんなことありえるのか?」という疑問が頭をもたげてくる。
なぜ心理調査官が、そこまで犯人の心理を読み、その行動を予測できるのかが紹介されていれば、先の疑問も感じなかったのかもしれないが、そうした記述はなく、疑問は膨らむばかり…。
作家の巧さから、表面的にはご都合主義だと思えない作品にはなっているのだが、「プロファイリングって、こんなに高精度に犯人の行動まで予測できてしまうの?」との疑問は、やはり拭いされない。やはり、これはご都合主義によるものと言わざるを得ないのではないか。
じゃ、この作品を楽しめなかったのかというと、決してそんなことはない。十二分に楽しめた。ただ、ちょっぴり物足りなさがあるというだけで…。