20年来のファンとしては本当に待ちに待った「一大復帰アルバム」……なのですが、まずは「文句」から。
◎1枚にまとめるか、せめて2枚組にしてほしかった。1枚40分程度のアルバムを「単価2800円」でばら売りにするのは「あこぎ」な商法に思えます(アーティストの意図ではないでしょうが)。
◎どうせ2枚出すのなら、もう1枚は新曲のみの「ブランニュー・アルバム」にしてほしかった。もしニューアルバムを作れるような環境・精神状態でなかったとしても、「現在の岡村靖幸」を伝えるような新曲が――どんなものでもかまわないから――せめて1曲欲しかった。
◎アルバムタイトル『エチケット』が、「初心に帰り、自らを律する」的決意表明を含んでいるのなら、デビュー曲「Out Of Blue」はどうしても入れてもらいたかった(どちらの盤にも入っていないと知って愕然とした)。
◎このアルバム(パープルジャケット)にかんして言えば、「セルフカバーアルバム」というよりは、「スタジオライブリミックスアルバム」のほうがふさわしいように思える。再録音らしい大胆なアレンジが施されているのは冒頭3曲のみで、その後の楽曲は過去のライブバージョン(録音は最近のものだとしても)に、卓上で手を加えたような音に聴こえる。
……などなど、オールドファンならではの不満は多々ありますが、岡村のヴォーカルから不穏な「くぐもり」が消え、かつての「キレ」が戻っていることは素直に喜べます。『Me-imi』『禁じられた生きがい』よりもずっと高音が出ていて、(ジャケット写真同様)「着ぐるみ」から10数年ぶりに出てきたかのような本当にひさしぶりの抜けの良い歌声です。しかし、「セルフカバー」という内容ゆえか、長期に渡るストイックな生活によるものかは判じかねますが、楽曲に対してずいぶんと距離を取って歌っているように聴こえました。「冷めている」と言うのは言い過ぎかもしれませんが、全編を通して、かつての「エロス」「焦燥感」といった、岡村靖幸ならではの特質が希薄になっているように思います。たとえばLIVE「家庭教師'91」を体験している者としては、「DATE」〜「祈りの季節」の流れは(ほぼ同アレンジで収録しているだけに)どうしても物足りないし、「だいすき」「あの娘ぼくが〜」はLive「ファンシーゲリラ」以降のアレンジを踏襲しているのですが、曲に魔法を吹き込む「パッション」(のようなもの)が足りなく感じてしまうのです。無理を言うな、これが現在40代半ばの岡村靖幸の「スタイル」なのだ、と言われたら言い返すことはできませんが、あの「暴れ回ってる情熱、躍動感」が「若さと時代の賜物」だったとはまだ認めたくありません。
ただ、冒頭「どおなっちゃってんだよ」はクールかつヘヴィーなダンスチューン(現在のフロアにも映えそう)に見事に生まれ変わっていますし、「アルファイン」「モン・シロ」「マシュマロハネムーン」といった岡村受難時代(?)のファンク・チューンはアレンジの完成度もすこぶる高く、再録した甲斐があったとじゅうぶんに思える出来でした。これらの楽曲は今後の方向性をも示唆しているようでもあって、たいへん興味深く聴けました。
総じてロング(ホット)・レビューになってしまいましたが、これも旧ファンの愛と期待ゆえ、お許しあれ。この再録盤は全盛期の岡村靖幸を期待している(私のような)期待値の高いファンが手放しに喜べる作品とは言いませんが、「復帰」すらあきらめかけていた(私のような)旧ファンは聴き終えて、胸をなでおろせる作品に成り得ていると思います。そして、「岡村靖幸」を未だ知らないリスナーにも彼のワン・アンド・オンリーの魅力をじゅうぶんに示し得る1枚でしょう。個人的には「娑婆」に戻ったばかりの岡村靖幸からの「とりあえずの」挨拶代わりとして受け取りました。次にリリースされるはずの「7枚目のオリジナルアルバム」を待ちつつ、しばらくはこのアルバムを聴き続けることでしょう。