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エチオピアからの手紙
  

エチオピアからの手紙 [単行本]

南木 佳士
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

文學界新人賞を受賞した「破水」をはじめ、人間の生と死を日常的に受け止めざるを得ない医師の内面を、濃密に描ききった短篇五篇
--このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

この世の悲惨に直面したとき人はどのように自らに忠実な態度がとれるだろうか浅間山を望む高原の病院で苦しみ痛みをともにする若き医師の物語

登録情報

  • 単行本: 251ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (1986/04)
  • ISBN-10: 4163089705
  • ISBN-13: 978-4163089706
  • 発売日: 1986/04
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 471,553位 (本のベストセラーを見る)
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形式:文庫
 南木さんのいいところは、尊厳死とか、老いとか、性とか、南北問題だとか、そういった「大きな」問題をきちんと見つめながら、それでも決してその「大きな」問題に対する判断を下そうとしないことだと思う。判断を下す必要がないからではない。ただ、それは小説がするべきことではないから。

 南木さんは、あくまで人の生活を書く。医者の生活がたくさん描かれているのは当たり前なのだけど、それと同時に、彼がみたたくさんの人々の生活も描かれる。そして、その場所から、「大きな」問題をじっと見つめる。そこから見ると「大きな」問題はとても遠くに見える。でも、だからといって、南木さんは目を逸らしたりはしない。ただ、その距離をじっと測る。そのままで、自分の生活を続ける。

 柔らかい淡々とした文章は現在に至るまで一緒。まだ若さが見えますが、その若さゆえの軽やかな会話文がとても魅力的です。南木さんを初めて読む人にも、最近のを読んだ人にもお勧めです。

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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
谷川俊太郎の「夜のラジオ」という詩に、「生きることを物語に要約してしまうことに逆らって」という一節があって、僕はこの本の中に収められている「破水」を読みながら、それを思い出した。

南木さんが好きだ。優しくて、読み易い。それでいて、素直な文章の中に、ときどきさくりと鋭すぎる一文が紛れ込む、文章が好きだ。だから、そんないつもの文章とかけ離れている南木さんのデビュー作、「破水」にびっくりした。

読み易くないのだ。読者をおいてけぼりにする文章。
たとえば、「スチームはまず空気からあたためにかかってくる。あたたまり始めた空気は頬に粘りつき、ぴんと張りつめていた皮膚をだらしなくさせる。だらしなさが伝染するのはいつでも容易だから、そんな変化があっけなく角膜にも移行してくる。」という文章がある。ん? と思う。この「だから」が、すんなり入ってこない。連想のしりとりだが、この連想は作者独自の感覚で、読者の共感を無視して進む。読者を待ってはくれず、作者は強引に世界を創りだしながら、白紙の世界をペン一本で切り開いていく。必死に。命がけで。これ以外の作品には、もうこんな文章はないが、この作品には、こういう「から」が何度も出てくる。

物語の主人公は、望まれない子を身ごもった妊婦の女医だ。彼女は、周囲がどんなに反対しても、産む。また、彼女が看るのは逃れられない死期の迫った老人で、家族は色々な思いを抱える。彼女は、そんな家族の思惑と和解をしない。ただ、「生かす」。

彼女は、逆らっている。そして、彼女は、南木さんだ。ペンを使って、彼の感じる世界そのものを「写し取る」のではなくて、「産む」、妊婦としての南木さんだ。僕は、忘れていたのかも知れないと思う。南木さんの文章は、あまりに読み易かったから、その根っこにある「逆らって」いる部分を忘れてしまっていたのではないか、と。

彼女、彼はいう。自身の出世のため堕胎をすすめる、子の父に。「つまんない物語は、とにかく自分の中で完結させなきゃ。シンポジストにもなれないよ。学会の」と。

生きることを物語に要約してしまうことに逆らって。そう、それは、「逆らう」ことだ。覚悟がいることだ。今の世の中は、完結を、結論を、求める。ただ、あるものをそのままに身体に留めるという選択を容易には許さない。

「陽子にはうなだれておろす気がまずなく、胸を張って産もうという意志もなかった。ただ、ゆっくり、着実な細胞分裂をくり返している腹の中の「芽」を、異物とは認めていないらしい、下等で鈍感な神経網の中にゆだねておきたかった。」

望まれぬ「生」、望まれぬ「死」。言葉に要約するのは簡単だけれど、それをそうしないことを選択する。それは、選択しないことでもある。選択しないことを陽子が選んだその瞬間、書かれなければならなかった、作家、南木さんの世界は産まれたのだと、そう思う。

読むたびに、この作品に挑まれる。いつまでも、逆らい続ける。それが、たまらない。
僕も、ずっと、挑み続けようと思う。
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形式:文庫
「破水」「重い陽光」「「活火山」「木の家」「エチオピアからの手紙」。1971年から1985年ごろまでの作品。
どの作品もよい。「死」の問題、末期の癌患者と向き合っている。著者の分身であろう主人公が医者で、自身の体験をベースにしているので話にリアリティがある。そして、長野の土地の香りがして、これがまたよい。この作品群では、浅間山が何度もでてきて、好ましかった。
「活火山」が一番気にいった。登場する女性がよい。著者は書く、この頃「私には書くべき切実な動機があった。人は死ぬ(ということー引用者)」(p.311)。「破水」について、「今回、文庫が出ることになって十数年ぶりに、『破水』を読み返してみた。読了後、不覚にも落涙。/耄碌したのだと自省してしまえばそれまでだが、いまの私にはもう『破水』を書く力はない。そして。以後に発表したどの作品も、・・・、『破水』の新鮮さには及ばない」(pp.313-314)と。
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