宮下志朗氏によるエセーの新訳。その流麗な訳文とともに丁寧な注がついていて参考になります。
モンテーニュ自身が書いていますが、彼の思想の基調はギリシア・ローマの古典にあり、特にセネカとプルタルコスからの引用が圧倒的に多いことで後期ストア派に親和性を抱いていることがわかります。ひるがえってキリスト教思想からはわずかにアウグスティヌスが引かれているのみです。
作中でモンテーニュは何度も自身を’ちゃらんぽらんなたち’だと自戒しており、セネカの厳しい自己規律とは微妙なずれを感じます。そのゆるさがこの作品のいわく言いがたい魅力の源になっているようです。 宮下氏の訳はこのあたりの雰囲気をたくみにかもし出していて、単なる古典の新訳といった域を超えているのではないでしょうか。